STORY

これからの君へ…未来のあなたを応援できる写真を撮りたい

明るさと前向きなエネルギー全開で話をしてくれたのはフォトグラファー小崎大輔さん、34歳。彼のトレードマークは“くまさんのマスク”なんだとか!? そんな優しさとユーモアに溢れた小崎さんだが、彼には写真を撮りたい「理由」があるという。そこには誰にもゆずれない信念があり、ある想いが込められていた。小崎さんが写真を撮る理由とは…その胸のうちを聞いた。

写真で”滝”修行!? 滝の名所で秘密特訓

Q小崎さんとカメラとの出会いを教えてください。

僕とカメラの出会いは20歳を過ぎた頃です。当時はフィルム写真のプリントをするプリントショップで働いていました。

ある日、お客様からデジタルカメラの不具合について質問をされたのですが、僕は何も答えられなかった。それがとても不甲斐なくて…カメラの勉強をしたいなと思うようになりました。

思い立ってすぐに、ショップで販売していたコンパクトデジカメを購入!! お店の中では一番スペックの高いモデルだったと思います。オート機能だけでなく、マニュアルモードもついていて、スローシャッターや背景ぼかしなんかも付いていました。今思うと、初心者にしてはレベルの高いものを選んだなと思いますが…(笑) これが僕とカメラとの出会いです。

Qはじめてのカメラ、使ってみてどうでしたか?

正直なところ、「思ってたんと違う〜」というのが感想でした!!

当時はガラケーと呼ばれていた携帯電話の写真の画質がどんどん上がっていた時代で、「画素数がいい=いい写真」という認識でした。ですから、高画質のデジカメで写真を撮れば、自然と良い写真が撮れるものだと思い込んでいたんです。

でも実際に写真を撮ってみると、高画質のデジカメだからと言って感動的な写真が撮れるわけではなかったんです。その状況になんだか物足りないなという気持ちが湧いてきたので、せっかくならいい写真を撮りたいなと思うようになりました。

Q画質がいいだけでは、いい写真が撮れないということですね。

いい写真を撮ってみたい!! と思うようになってからは、どんどん写真の魅力にハマっていきました。写真の入門書を読んでみては、その指示通りに写真を撮ってみるということの繰り返し。指示の通り、光や構図などに気をつけて撮影するだけで、どんどん上達していくんですから不思議ですよね。

僕の地元・三重県名張市には、風光明媚な場所がたくさんあったので、時間を見つけては風景写真を撮りに出かけました。特に、滝の名所で有名な赤目四十八滝は絶好の写真スポットなんです。当時の僕は、赤目四十八滝でもアルバイトをしていたので、仕事が終わるとカメラと三脚を持って滝の写真を撮影していました(笑)

滝の撮影って実は難しくて!! スローシャッターなんかも使いこなさないといけないですし、構図も大切。今思えばとてもいい練習場所でしたね。

僕の愛犬が最期に教えてくれた「写真」の価値

Qなんて贅沢な環境なのでしょう。それでカメラの腕を上げていかれたんですね。そこからプロの道へ進むことになったのはなぜですか?

きっかけは、大好きな愛犬「姫(ヒメ)」の”遺影”を撮影したことでした。

当時の僕は一人暮らし。ある日実家から悲しい連絡が入ってきました。姫が老衰で弱っていて、もう残り時間が少ないだろうと…。そして、家族から「大輔に姫の遺影を撮って欲しい」とお願いされたんです。

遺影は、姫が生きた証。その証を残したいという家族の思いを受けて、僕は夢中で写真を撮りました。姫らしい写真が撮れたと思います。姫は撮影後まもなく亡くなりましたが、その時撮った姫の写真は、僕ら家族にとって、とても価値のある大切な写真になりました。

他の家族にとっては、ただの犬の写真かもしれない。でも、僕らにとっては特別な一枚だったんです。僕はこの時、写真の価値の重みは、人によって違うということを、身をもって経験しました。

このことがきっかけとなって、誰かにとって”大切だと思える写真”を残すという仕事であれば、フォトグラファーという道へ進んでみたいと思うようになりました。

出典:Daisuke Ozaki

Qきっと愛犬の姫ちゃんが小崎さんの後押しをしてくれたんですね。フォトグラファーになった今は、その想いが実現できていますか?

フォトグラファーになると決意してから最初に働き始めたのはブライダルフォトでした。お客様のハレの舞台を撮影させていただくことにやりがいを感じていましたし、お客様にとって価値のある写真を撮りたいという想いも実現できていたと思います。

でもブライダルはあくまでも結婚式の写真のみ。ほんの一瞬です。人生の中で大切な場面というのは、他にもたくさんあるので、いろんな場面に立ち会って写真を撮りたいと思うようになって…

ブライダルで8年ほど勤めた後、30歳を迎えた頃にフリーランスに転身することにしました。リンクエイジ社と出会ったのはちょうどその頃です。

Q人生の大切な場面は人それぞれ。撮影の幅を広げる選択をされたんですね。特別な写真への想いが強くなっていったということでしょうか。

僕は、身の回りにあるもので、死ぬまで大切にできるものって限られていると思うんです。おもちゃや流行りものは数年で入れ替わっていく…でも「写真」というものは、生まれてから死ぬまで、一生涯を通して持ち続けるものもありますよね。

これほどまでも大切にされるものは、他にはないなと思っています。

もちろん、衣食住には関係のないことですから、なくても正直困らない。でも写真があることで人生が豊かになってくれることがあるとすれば、その存在って偉大なのではないかなと思うようになりました。

大切なのは「距離感」をわきまえること

Q小崎さんの考える”スクールフォトの魅力”について教えてください!!

スクールフォトというのは、子どもたちが主役になる写真ですから、子どもたちとご家族にとって、大切な一枚になるかもしれない! そう思うと、なんて価値のある魅力的な仕事なのだろうと思います。

時には成長の記録になり、時にはご家族の大切な歴史として思い出に残る。僕はその一助になれるということに誇りを持っています。

Qスクールフォトを撮影する現場で大切にしていることはありますか??

子どもたちは素直で純粋ですから、美しいものを見た時、感動をした時、楽しい時、その目はキラキラと輝いています。そんな彼らの魅力が伝わる写真を撮りたいと思っていますから、僕がいることで子どもたちや先生に不安を与えてはいけません。 「くまさんのマスク」をして現場に行ったり、カメラに可愛いシールを貼ってみたり、少しでも安心してもらえるよう工夫していますが、一番大切なのは「信頼」してもらうこと。適宜コミュニケーションを取りながら、子どもたちからも、先生からも「このフォトグラファーなら大丈夫」と思ってもらえるよう心掛けています。

Q信頼してもらえる関係作りということですね。他にはありますか?

僕を信頼してくれている子どもたちというのは、自然と距離が近くなるものです。先生からも「こちらの撮影もお願いします」と提案してくださることもあるくらい。安心感と信頼があれば「距離感」が自然と近くなっていきます。

とはいえ、信頼関係があるからといって、いつでも至近距離の写真を撮るわけにはいかないので、撮影の目的に合わせながら「距離感」を調整しています。

Q「距離感」の調整ということですが、具体的にはどんな工夫をされていますか?

視線の高さを意図的に変えたり、レンズワークを調整したりして、このシーンの魅力を伝えるために、どの距離感がいいかな? ということを考えながら撮影しています。

視線の高さなんかは特に面白くて。状況に応じて、子どもたちの視線に合わせた方が臨場感も出ていい時もあれば、あえて大人の目線で撮影した方がいい時もあります。例えば、「どんぐり拾ったよ〜みて〜!!」なんて時は、あえて大人の目線から撮影したりします。それは、大人にどんぐりを見せたかった子どもたちの意図を汲み取るということにもなりますし、保護者ならどう見たいかな? という視点で撮ったりするんです。

写真を見る人の視点と、子どもたちの視点と両方をイメージしながら撮影することを大切にしています。

子どもたちの未来へ “御守り”になるような写真を撮ってあげたい

Qリンクエイジには「すべての愛を力に変える」というミッションがありますが、小崎さんの考える「愛」について教えてください。

愛とは何か…本当に難しい質問ですが…。これまでたくさんの子どもたちを撮影する中で、確かに感じてきたことがあるんです。

子どもたちの表情がキラキラしていて愛おしいと感じるのはなぜだと思いますか?? 僕が思うに、それは、子どもたち自身が愛に満ちているからなのではないでしょうか。彼らは「自分は誰からも愛されていない」とか「自分のことが嫌い」なんてことを少しも感じていない。

もちろん、人生は山あり谷ありですから、辛いこともあるでしょう。いつか自分を好きになれないなんて日が訪れるかもしれない。でも、愛されて育ったこと、自分自身のことが大好きだったこと、そんな証が“写真”に残っていれば、いつか写真を見た彼らに勇気を与えられるかもしれないのです。

みなさんの中にも、昔の写真を見ていたら少し元気になった!! なんて経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。いつか子どもたちが成長して写真を見返したときに元気や勇気が湧いてくるような、そんな”御守り”のような写真になってくれれば嬉しいです。

少なくとも、僕はそんな写真を撮りたいなと思っています。

Q子どもたちの未来までもを支えてくれる大切な一枚があるかもしれないということですね。小崎さんがこれから挑戦したいことを教えてください!!

大好きなフォトグラファーという生き方はこれからも続けていきます!!

でもそれだけではありません。僕は写真と同じくらい”剣道”も大事にしているので、剣道の指導者としても成長していきたいです!!

僕は子どもの頃から剣道を続けてきました。怪我をしたり、挫折を経験したり、どうしようもないくらい辛いこともありましたが、剣道はそれを乗り越える「心の強さ」と、その強さに勝るくらい「優しい人間」になることが大切だと教えてくれました。

今は、指導者として後進の育成をするチャンスもいただいているので、剣道の技術だけでなく、「心の強さ」と「優しさ」についても伝えていきたいなと思っています!!

彼に揺るぎない信念があるのは 「一枚の写真」の価値を知っているから。

愛犬が最期に残してくれた贈り物は
フォトグラファーとして生きていく”覚悟”だったのだろう。

今日も、誰かの特別な一枚のために…
小崎さんの優しく真剣な眼差しの先に写るものが
明日の誰かにとって、大切な一枚(写真)になっていく。

Interviewee by Daisuke Ozaki
ozaki_photo

oz_kendo

Interview, Text by Miya Ando
miya_ando

Photo by Takuya Ishiguchi

カメラマン募集
カメラマン募集