幸島乃愛さん、23歳。大学を卒業して間もない彼女だが、フォトグラファーとしてのキャリアと熱意は「プロ」そのもの。その柔らかく優しい雰囲気から想像できないほど、強い意思を持ち「撮る」ことにこだわりを持ち続けてきた。彼女を突き動かすものとは何なのか?ひたむきにカメラと向き合う彼女の原動力について話を聞いた。
サッカー部を応援したい‼︎
その思いを貫いたらカメラを持っていた
高校2年生の時に先輩に誘われて観戦した高校サッカーの試合がきっかけです。
私の通っていた高校のサッカー部は、全国大会の出場経験もある強豪校です。
それはもう迫力のある試合でした。
元々、私もサッカーをすることも見ることも大好きで、大きな競技場で観戦するサッカーは臨場感もあって興奮しました。80分間の試合の中で、最後まで諦めずに走り続ける選手達の姿を見て、このチームを応援したいと強く思ったのです。
どう応援したらいいのかと考えた結果、選手の頑張る姿を写真に撮って記録に残すお手伝いをしたいと思うようになって、自主的にサッカー部の撮影を始めました。これが私とカメラとの出会いです。
チームを応援したいと思った時に、まず思いついたのがマネージャーになるということでした。でも、残念ながらマネージャーになることはできなかったのです。
というのも、私の高校はスポーツにも力を入れているので、普通クラスの他にもスポーツコースというスポーツ専門のクラスがあって、サッカー部に所属する選手たちは、スポーツコースの生徒ばかり。午前中に授業を受けた後、午後は練習をするというスケジュールのため、普通クラスに通う私がチームに加入してマネージャーをするということは叶いませんでした。「例えマネージャーではなくても何かできないか…」私は諦めずに考え続けました。
そこで思いついたのが、「応援する」というスタイル。応援と言ってもチアガールなどではありません。サッカー部専属の応援部に入って、全校生にサッカー部を応援してもらうためのお手伝いをすることにしました。
大好きなサッカー部を全校生で一丸となって応援できて、とても充実していましたが、他にも自分ができることはないかと考えたときに、選手の頑張る姿を記録に残してあげたいと思うようになったのです。これが高校3年生の時です。試合会場の応援席からでしたが、初めてカメラを持って選手の撮影をしました。
コロナ禍の無観客試合
選手達の活躍を「私が写真に残す」と使命感に燃えた
そうなんです。試合中の選手達の表情には目を見張るものがあります。選手達が頑張っている姿を夢中で撮影しました。
当時は、とにかく写真を撮って選手達に喜んでもらうということがモチベーションになっていましたが、大学生になった時に状況が一変します。
新型コロナが流行したことで、多くの試合が無観客試合になってしまったのです。
本来であれば、保護者の皆さんも応援に来られます。きっと選手達がサッカーを始めたばかりの頃から応援されてきたことでしょう。その成長を誰よりも近くで見守ってこられたのが保護者の皆さんなのです。
ところが、コロナ禍ではそれが叶わないというのが現実でした。保護者ですら試合会場に入れないとなると、成長の記録を誰も残すことができません。
そのような状況の中で、「私がやるしかない‼︎」という使命感に突き動かされ、私が試合の様子を撮影して、保護者や選手に写真をお配りすることにしました。
保護者や選手からは「この写真好きです‼︎」とか「成長が残せて嬉しい」と言っていただくこともあって、少なからず、私の選んだ道は間違いではないのだと確信しました。
コロナ禍の大変な時だからこそ、大好きな高校のサッカー部の試合や練習の様子を撮りたいと、何度も監督にお願いをしました。
これまでに前例のないことですから、最初は監督も驚いた様子でした。
何度も監督にお願いをさせていただく中で、少しずつチームの撮影者として受け入れていただけるようになりました。
そうですね。母校のサッカー部の専属フォトグラファーとして受け入れていただけたのは大学3年生の時です。少し時間はかかりましたが、それまでの時間を無駄にしていたわけではありません。
大学入学後は高校サッカーなどを取材するメディアに所属して、取材や撮影の勉強をしていました。色々なサッカー部を取材させていただきましたが、知れば知るほど、サッカー部を撮りたいという思いが募るばかりで(笑)
転機は大学3年生の時に訪れます。母校のサッカー部が全国高校サッカー選手権大会の東京都予選で優勝をした際に、監督の取材をさせていただくことになったのです。メディアから派遣されて取材をしている姿を見た監督に、「幸島、すごいな」と声を掛けてもらえて、ここまで本気でサッカーの写真を撮り続けてきたことを認めてもらうことができたのです。
この取材がきっかけとなって、私は出身校のサッカー部の専属フォトグラファーとして認めてもらえることになりました。
そうなんです。その次の年の全国大会で、初めて専属フォトグラファーとして名前を載せていただきました。全国高校サッカー選手権大会の100回目となる記念大会で、試合会場はなんと「新国立競技場」、大興奮の中での撮影となりました。
グラウンドで輝く選手達を撮影することが好きだと実感できましたし、努力は報われると感じた瞬間でもありました。
こうして私は、大学卒業後もプロのフォトグラファーとして歩んでいく決心をしました。
私の仕事は「一生に一度の思い出を残すお手伝い」
写真は一生ものです。写真に写る大切な瞬間というのは生涯の「宝物」として残り続けるのだと思います。そんな大切な瞬間を撮らせていただくことにやりがいを感じていますし、プロのフォトグラファーを目指すにあたり、この気持ちを活かせる場所があるといいなと思った時に、スクールフォトに出会いました。
当時はスクールフォトという分野について詳しく知りませんでしたが、「一生に一度の子ども達の運動会、写真に残しませんか?」というフォトグラファー募集のページを見たときに、これだと思いました。
間違いなくやりがいがある仕事だろうと思いましたし、きっと自分にとっても良い経験になるだろうと思ったのでスクールフォトに挑戦することにしました。
スクールフォトにも色々な会社がありますが、私は子ども達の自然な様子を撮りたいと思っているので、「自然体を撮影してほしい」というリンクエイジの方針に共感しています。
リンクエイジの場合は、写真の撮り方は一定以上のところはフォトグラファーに任されているので、肩の力を抜いて、撮りたいものを撮らせてもらえます。もちろん、だからと言って、自由に野放しにされるわけではありません。もっと良い写真を撮るためのフィードバックもあるので、次に向けての自信にもなりますし、撮影のテクニックだけでなく、編集のコツに至るまで丁寧にフォローしてもらえるので、フォトグラファーとして成長するにあたり、ありがたい環境だなと思っています。
自然体の子ども達を撮るために、保育の邪魔にならないよう、適度な距離感を保ちつつ、臨機応変に関わり方を変えています。
そのためにも、撮影前にはリンクエイジからもらう「事前情報」を必ず確認しているのですが、写真を撮る上で気になることがあれば、まずはリンクエイジに園の詳細を確認するようにしています。それでも現場で気になることがあれば、お邪魔にならないタイミングに気をつけながら、直接先生に声を掛けて詳細を確認するようにしています。
サッカー部の撮影となると、選手達は集中すべきところも、ふざけて良いところも分かっていますから、彼らのありのままを撮るということに、あまり難しさを感じることはないのですが、小さな子ども達となると様子は様々です。
人見知りして泣いてしまう子もいれば、興味津々で近づいてきてくれる子もいます。フォトグラファーがいることによって、泣かせてしまったり、こども達がそれぞれの関心事に集中できなかったりという状況ではいけませんから距離感の取り方だったり、子どもたちの興味を表現することが難しいなと感じています。
でも、「やりがい」という部分では、とても大きなお仕事だと思います。
園生活の時間というのは、保護者の知らない世界ですから、日々成長していくお子様の姿を保護者に届けられたらなという気持ちで撮っています。
これはコロナ禍でサッカー部の写真を撮り続けてきたからこそ、理解できることなのかもしれません。子どもの成長を直接見ることができない保護者の皆さんの寂しさも知っていますし、だからこそ我が子の成長を見たときの感動が人一倍大きいということも知っているからです。
愛のないフォトグラファーに、愛しい我が子の写真は託せない
保護者や先生、監督など、皆さんに信頼してもらえなければ「お願いします」と託していただくことはできません。愛のないフォトグラファーに大切なお子さんの成長を撮ってほしいとお願いできませんよね?
小さな子ども達にとっても、サッカー部の選手達にとっても、今一緒にいる仲間と共に過ごして、色々な経験を重ねながら成長をしていくということは、かけがえのないことです。そんな貴重な姿を撮影させていただけるなんて、こんな素敵なこと「愛」でしかありません。
かけがえのない瞬間を撮り続けることで、フォトグラファーとしてたくさんの愛を届けたいと思っています。
写真を手にした方から「のあさんの写真があって良かったです」とか「一生の思い出にします」と言っていただくと、この仕事を選んで本当に良かったという気持ちになります。
まだまだ駆け出しのフォトグラファーですが、「また幸島さんに撮ってもらいたいな」と言ってもらえるようなフォトグラファーになりたいです‼︎
「大好きなサッカー部を応援したい」という気持ちから手にしたカメラ。
決して平坦な道ではなかったにもかかわらず、
ひたむきな努力の先に、
プロのフォトグラファーという新たな道を切り開いたのは彼女自身だ。
かけがえのない瞬間を残すために…
その意思は驚くほど強く、そして柔らかな優しさに溢れている。
Interviewee by Noa Koushima
HP:https://ksanphoto.jimdosite.com/
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Interview, Text by Miya Ando
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Photo by RYUJI.K