STORY

保育士からの転身‼︎ カメラ女子が「プロ」を目指した理由

「保育の様子を伝えるという点でセンスを感じる」と撮影技術に定評のある小山田恵利さん。実はフォトグラファーとしてデビューしてまだ8ヶ月ほどの新人なのだが、フォトグラファーになるまでの6年間は、保育現場で活躍する保育士だったという。保育のプロからフォトグラファーへ転身したのはなぜなのか。優しい彼女の心に秘めた強い想いを語ってくれた。

「カメラ女子」の流行りに便乗したら、大好きになっていた

Q小山田さんとカメラとの出会いを教えてください

小さな頃から、祖父にたくさん写真を撮ってもらったので、カメラは身近な存在でした。

私の祖父は多趣味な人なんですが、中でも一眼レフが大好きで、以前は自宅に現像用の暗室があったほどなんです。

でも、私自身はというと…、学生時代は友達とスマホで撮影しても「下手くそ〜」なんて言われていたくらいで(笑)まさか自分がカメラの道に進むことになるなんて、想像すらしていませんでした。

ちょうど短大を卒業する頃、世間ではカメラ女子が流行るようになっていて、みんな首からカメラを下げていたんです。なんだかその姿にとっても憧れてしまって…卒業後に働き始めて、初めてのボーナスでカメラを買うことにしたんです。初心者向けの一眼レフのセットでしたが、ちゃんとしたものを使いたくて、思い切って購入しました。

それから趣味で写真を撮るようになったんです。

Qおじい様がカメラを趣味にされていたんですね。ご自宅に暗室があったなんて本格的な趣味で驚きです。

そうなんです。暗室を使っていた記憶までは無いんですが、私の成長を嬉しそうに撮影してくれていたことは覚えています。

今は80歳近いですが、最近までカメラのサークルに入ったりしていたようです。私がカメラを買った時も、祖父に相談したんですよ‼︎ 「どこのメーカーのカメラがいいかな?? 」と質問したりして、「どれもいいけどな」なんて言いながらも、とても嬉しそうにカメラの話をしてくれました。

最近では、コロナ禍の影響もあってカメラサークルの集まりから遠ざかってしまったようで、「もう撮らないから」とフィルムの一眼レフカメラを譲ってくれたんです。

私はフィルムで撮影したことが無いんですが、祖父が色々と教えてくれるので、早くフィルムでも撮影ができるようになりたいなと思っています‼︎

「一度きりの人生だから挑戦してみたい」
迷う私の背中を押してくれたのは家族だった

Qおじい様の存在がとても心強いですね‼︎ フォトグラファーになるまではどんなお仕事をしていたんですか?

短大卒業後は、保育士をしていました。

保育士をしている姉の影響もあったと思いますが、元々子どもが好きで、好きなことが仕事に繋がるといいなと思っていたので、保育の道に進むことにしました。

とはいえ、いざ勉強を始めてみると、子どもの生態に驚くこともたくさんありました。身近に小さな子どもがいなかったので、当時は慣れないこともありました。

学生の頃は、赤ちゃんの抱っこですら難しくて、自宅にある重たいお米の袋を抱きしめて、抱っこの練習をしたこともあります。

働き始めてからは、色々な経験をさせてもらいましたし、保育士として6年間、本当に楽しく過ごしていました。

Q保育士として楽しそうに働く小山田さんの様子が目に浮かびます。でも、なぜ保育士からフォトグラファーへ転身しようと思ったんですか?

保育士の仕事に何か嫌なことがあったというわけではありません。むしろ、やりがいも感じていたので、このままずっと保育士として働いていく将来というのもあったかもしれません。

ただ、人生は一度きりですから、長い人生の中で後悔のない生き方がしたいなと思った時に、何か新しいことにチャレンジしてみようと思ったんです。

せっかくチャレンジするならば、好きで続けてきたカメラの道だなと思いました。

もちろん葛藤はありました。保育士という仕事は大好きですし、簡単に辞めるなんて考えられませんでした。保育士を辞めてしまっても良いのかなとか、写真を撮るのが上手な方はたくさんいらっしゃいますし、このまま突き進んでいいのかなという不安はありました。

でも、そんな時に、祖父をはじめとする家族が「やってみなよ‼︎ 」と背中を押してくれたんです。それが心の支えになったので、一歩踏み出してみようと思いました。

Q保育士からフォトグラファーへの転身、ご家族が背中を押してくださったんですね。 カメラはどうやって勉強したんですか?

保育士として働きながら6年間、趣味でカメラを続ける中で色々な出会いがあったんです。

SNSでカメラ友達ができると、上手な人がアドバイスをくれたりするんです。カメラのイベントに参加したり、カメラ友達と交流したりしながら、独学でカメラを学んでいきました。

プロのフォトグラファーとしてデビューして8ヶ月が経とうとしていますが、今は毎日が新鮮で、楽しく撮影しています。

スクールフォトグラファー、
それは保育士の経験が活かせる最高の仕事だった

Qデビューして8ヶ月‼︎ ということですが、普段はどんな撮影をしていますか?スクールフォトを撮るようになったきっかけも教えてください。

フォトグラファーとして働き始めた頃は、七五三やお宮参りなどのロケーションフォトやスタジオフォトの現場をメインに撮影していました。

子ども達の成長の節目を撮影させていただくということで、保育士の経験が活かせるかもしれないと思いましたし、撮影を通して子ども達の成長に携われることにワクワクしました。幸せな雰囲気の中で撮影させてもらえるので、こちらまで優しい気持ちになりますし、シャッター越しにニヤニヤしちゃうこともあるくらいです。

七五三やお宮参りは、子ども達と関わることができるのでとても楽しい現場なんですが、実は私、働き始めるまで「スクールフォト」という分野があることを知らなかったんです。

Qえ?! スクールフォトを知らなかったんですか?

フォトグラファーとして働き始めてしばらくした頃に、インターネットで撮影の仕事の検索をしていたら、リンクエイジのフォトグラファー募集の案内を見つけたんです。

その時に、初めてスクールフォトのことを知りました。

幼稚園や保育園などで子ども達の撮影ができるなんて「私がやりたかったことは、これだ‼︎ 」と思いました。

というのも、私が勤めていた保育園では、日常の保育の様子など、子ども達の写真は保育士が撮影していたんです。

私も保育現場で子ども達を撮っていましたが、撮ることに夢中になると全力で保育をしてあげられないという思いもあって…でも、かといって保育を優先していると「この表情いいな‼︎ 」「この素敵な表情、保護者にも見せてあげたい‼︎ 」という瞬間があっても、その瞬間にシャッターを押すことができないんです。

そういったもどかしい経験をしたからこそ、子どもの表情を撮るためのプロがいる心強さみたいなものは感じていて、スクールフォトグラファーは大切な役割を担っているんだなと思いました。

Qはじめてのスクールフォトグラファーとしての仕事はどうでしたか?

小規模保育園の夏祭りの撮影でした。リンクエイジの社員フォトグラファー2人と一緒に現場に行き、勉強させてもらいました。フォトグラファー3名体制とはいえ、それぞれがホールや各教室のイベントに張り付かないといけなかったので、「恵利さんはここで撮ってね‼︎ 」と指示をもらって、とにかく一生懸命にスタンバイしていましたね。

私が担当したのは「宝探し」。教室に置かれたビニールプールの中に新聞紙が敷き詰められていて、その中に隠された宝を探すというもので…難点は、子ども達がみんな下を向くことでした。お宝探しに必死ですから(笑)

前を向いていない子ども達の表情を撮るというのは難しかったですが、とにかく楽しい雰囲気が伝わるといいなと思って、私も色々な格好をしながら、必死になって撮影していました。

「先生、子どもの顔はこの角度から撮ってほしいわ」
保育士時代に保護者から教わったことが今でも活きている

Qフォトグラファーとして子ども達を撮るのは難しいんですね…

そうですね。限られた時間内で、たくさんの子ども達を撮影するということに難しさを感じることはあります。でも私は保育士として子ども達と接してきましたし、予測不能な子ども達の動きに圧倒されるみたいなことはないですね。

保育士時代にも、保護者から「こんな角度から子どもの表情を撮ってほしい‼︎ 」とか、いい表情を撮るためのアドバイスをもらったりしていたので、今でもそれが活きていたりします。

Qフォトグラファーとして大切にしていることはありますか?

まだまだ駆け出しなので、事前準備を大切にしています。

例えば、リンクエイジからいただく事前資料には、タイムスケジュールや撮影する子ども達の年齢などの詳細情報が載っていますので、しっかり確認して頭の中でシミュレーションしています。

これって本当に大切な情報で、情報量が多いので保育現場のことを想像しやすいんです。初めは驚きましたが、写真屋さんの視点というよりも、保育士である私が読んで納得する内容なので、園視点のものが多い印象です。「子ども達の大切な一瞬を撮るんだ」というリンクエイジの強い想いも感じたりします。

こういった事前情報や先生との打ち合わせだけでも保育の流れが頭に浮かんだりするので、保育士の経験が活きているかもしれないですね。

今は撮ることに必死ですが、もう少し心に余裕が出てきたら、思いを込めて撮りたいなと思っています。

園生活の中で我が子がどんな様子で過ごしているのか、保護者の皆さんは知りたいですよね。

お迎えの時に、先生から「今日はこんな風に過ごしていましたよ」とお話があると思いますが、口頭だけでは伝わらないこともたくさんあります。

その子のその時間は、そこにしかありませんから、「園ではこんな顔をしているんだな」とか、「楽しそうにしているな」とか、保護者が見て嬉しい、心が温まるような写真を撮りたいですね。

「空」写真が教えてくれた愛のカタチ

Qリンクエイジには「全ての愛を力に変える。」というミッションがありますが、小山田さんにとって「愛」とはなんですか?

写真って、人の心を動かす力がありますよね。だから私は写真が大好きなんです。

一枚の写真から、感動や幸せが溢れて出ていたり、元気をもらったり。時には撮影者の心の訴えが伝わったりしますよね。そうやって心が動くことに「愛」を感じています。

特にその「愛」を強く感じたのは、コロナ禍になってからのことです。

コロナが流行し始めた頃、大勢の人が集まるイベントが無くなり、カメラ好きの人たちと一堂に会する機会が無くなってしまいました。会えない日が続くと、以前よりも「距離」を感じたりするものですよね。

でもそんな毎日の中で、一人のカメラ友達が「365日、1日1空」という活動を始めたんです。365日、毎日「空」の写真を撮ってSNSにアップするという活動です。

私は空が大好きですし、「空」の写真は見ているだけで幸せな気持ちになれたので、これは素敵な活動だなと心が躍りました。

2年目は次のお友達へバトンタッチされ、3年目に私の元にバトンが来ました。これは挑戦するしかないと思いました。

毎日の空模様は、晴天だけじゃなく、曇天や雨空だってありました。でも、ある雨の日、ストロボを焚いて撮影したら、雪みたいに綺麗な空が撮れたんです。誰もが憂鬱に感じる雨空が、美しく見えた瞬間でとても感動したんです。

そういう写真を見てもらうことで、私が空を見上げた時に感じる、温かい気持ちや感動が伝わると嬉しいなと思っていましたし、それが伝わったよと反応が返ってくることも喜びになりました。

だから私は、たくさんの人の心を動かすことのできる、「愛」あるフォトグラファーになりたいと思っています‼︎

365日、どんな1日でも「空」を撮り続けた小山田さん。彼女は知っている、二度と同じ空は現れないということを。

子ども達の表情もまた同じこと。

二度とは起こらない奇跡のような瞬間を、彼女は残そうとしている。

保育士として子ども達を見守ってきたからこそ撮ることのできる特別な一枚は、写真を見た人の心を満たす「特別な一枚」になるに違いない。

Interviewee by Eri Oyamada
eri.8111

Interview, Text by Miya Ando
miya_ando

Photo by Kenta Sagara

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