STORY

いつかカメラで恩返しを…野球少年だった僕が出会ったカメラの世界

柔らかい笑顔と純粋な瞳が印象的な光武朝規さん。彼はかつて野球少年だった。一球に魂を込め、青空のもと白球を追いかけた少年時代。野球を愛し、野球から多くを学んだという。そんな光武さんが今追いかけるのは、子どもたちの「瞬間」。一枚一枚の写真を全力で撮りたいと語る彼が、スクールフォトグラファーの仕事の魅力を語ってくれた。

フォトグラファーは想定外!? 元野球少年がカメラを持ったとき

Qカメラとの出会いについて教えてください。

卒業アルバムを制作する会社に就職したことをきっかけにカメラと出会いました。 驚かれるかもしれませんが、就職した当時、僕はフォトグラファーになるつもりがなかったんです。はじめは編集業務を希望して入社したにも関わらず、蓋を開けてみたら、素材写真も撮影してくることになって(笑) 会社から一眼レフを渡された時には、なんのことだ? と思考が停止しました。ピントの合わせ方もわからないような初心者ですから、不安しかなかった…というのが正直な感想でした。

Qフォトグラファー志望ではなく編集者志望だったんですね。

大学卒業後に全く別業界の会社で働いていましたが、人生の中で長い時間を“働く”ことに費やすのならば、自分が夢中になって没頭できる仕事に就きたいと考えるようになりました。

絵やデザインにも興味があったので、紙媒体の編集ができるようになりたいと思って、社会人をしながらスクールに通って画像編集のソフトウェアの使い方を学びました。

この道で頑張ってみたいという決意と準備ができたので、25歳で思い切って転職。それが卒業アルバムを制作する会社でした。

Qそれで卒業アルバムの会社に転職されたんですね! 編集のつもりで入社したのに…そこからカメラを持つことになったんですよね!?

編集もしましたが、素材写真も撮ってくるように! ということで。カメラを手渡された時は驚きました。

でも、現場に行く以上は良いものを撮ってあげたいなという気持ちはありますから、寝る間も惜しんでカメラの勉強をしました!!

とにかく現場に入って先輩から学ぶしかありません。「この状況はどう撮影する?」みたいな練習を繰り返していくことで、技術を自分のものにしていきました。

幸いなことに、アルバムの会社なので過去の素材写真がたくさん残っていて、過去の写真から設定やアングルなどを学ぶことができました。学校や園の行事って毎年同じ行事がめぐってくるので、そういう意味では予習がしやすいんです。ある程度の予習ができた上で撮影に挑めたことは良かったなと思います。

Q突然の一眼レフですから戸惑いも多かったでしょうに。寝る間も惜しんで勉強とは熱心ですね。

カメラって正解がないので、いろんなことを試せるんです。新たな発見があると面白いですし、いつの間にか「楽しい」という感覚になっていました。

会社にはフォトグラファーの同僚もいて、同世代が多かったので、一緒に旅行がてら撮影することもありました。他にも、甥っ子の撮影など、プライベートでもカメラに費やす時間も増えてきて、撮影方法の深掘りもできるようになって、どんどん没頭していきました。自分の性格に合っていたんだと思います。

人の記憶は薄れるもの 記憶を残せる写真を撮りたい

Q性格に合っていたというと?? 興味のあるものに没頭できるタイプということですか??

興味を持ったら、それなりにならないと気が済まないというか…、負けず嫌いというか(笑)

僕は、根っからの野球少年だったんです。小学生から大学生まで野球をやっていて、朝から晩まで野球の練習に明け暮れていました。

思えば、野球以外でこんなにハマるものに出会ったこともなかったので、カメラが僕を本気にさせてくれたという感覚です。

Q野球少年だったんですね!! 野球をやっていたことがフォトグラファーにも活きているなんてことはありますか?

フォトグラファーって、見た目以上に体力勝負なところがあるんです。子どもたちに負けないくらい動き回って撮影していますから! ガッツがあるとか、体力があるとか、そういう部分は野球をやっていて良かったなと思います。

何より、野球は毎日の練習の積み重ねが大切ですから。忍耐力や集中力も身についていたようで、フォトグラファーとして日々修行する中で、かなり役立っていると思います。

Qスクールフォトグラファーとして働いてみて、どんなところにやりがいを感じていますか??

スクールフォトグラファーとして10年のキャリアがありますが、今でも撮影が終わるとドッと疲れるんです。小手先の技術で撮影をこなすのではなく、撮影に全力を出し切った証拠だなと思っています。

人の記憶って、成長する中で薄れていくものも多いですよね。一枚の写真でも思い出を残すきっかけになりますし、それを残すことって大切なことだなと感じています。

というのも、僕自身、写真があまり残っていないんです。野球の写真も思いのほか少ない。記憶の中には残っていても、事実として写真が手元に残っているわけではないので、歳を重ねるごとに、少しずつ記憶が曖昧になっていくような感覚もあって…。それって寂しいですよね。

だからこそ、この「瞬間」を記憶に残せるような、思い出に残してあげられるような写真を撮りたいなと思って現場にいます。どの現場も全力です。それが僕のやりがいになっていると思います。

「瞬間」を逃さないために、神経を研ぎ澄ます

Qスクールフォトグラファーとして現場で大切にしていることがあれば教えてください。

“いい瞬間”を一枚でも多く残したいなと思いながら撮っています。僕の考える”いい瞬間”というのは、写真として切り取ってずっと手元に残したいと思ってもらえる瞬間です。プロのフォトグラファーがいるからこそ撮れる写真じゃないと意味がないですから、どうしたら撮り逃しなく瞬間を残せるかということに神経を研ぎ澄ましています。

そもそも、子どもたちのいる世界には、同じ瞬間は二度と訪れないですから。集中しているとき、楽しいとき、がんばっているとき、状況によって”いい瞬間”って違ってくるので、何に集中しているの? 何をがんばっているの? など、その瞬間に何が起こっているのかまで伝わるような写真を撮りたいなと思っています。

Qその瞬間に何が起きているかまで伝わる写真を撮るということですね。そうは言っても、現場では予測不能なことばかりで難しそうです…

たくさんの写真の中から選ばれる写真って、一枚見れば当時の全てを思い出せる写真だと思うんです。卒業アルバムの編集をしてきたからこその視点かもしれないですが、この一枚があれば記憶が蘇るというものを選んで欲しい。だから、一枚へのこだわりが大きいのかもしれません。

この後最高の瞬間が来るな!! と予測して、先回りしてシャッターを切る準備をするんです。先読みが当たっていないと撮れないことも多いので、現場の空気を察する力というのも、フォトグラファーには必要なのかもしれません。

僕が全力で撮った一枚の写真が誰かにとって手元に残したくなるような写真になってくれれば、フォトグラファー冥利に尽きます。

Q逆に、神経を研ぎ澄ますからこそ、これはいい瞬間が撮れないな! と感じる時もありますか??

ありますよ!! フォトグラファーがいることに慣れない子どもたちは、テンションが高くなったり、妙に張り切ったりして、自然体の雰囲気が撮れなくなってしまいます。僕は子どもたちの世界にお邪魔するけれど、あくまでも黒子の存在。僕がいることで不自然になってしまうと意味がありません。

そういう時は、少し距離を取ったり、教室を出てみたりして、子どもたちが自然に落ち着くのを待ってから戻るようにしています。

Qスクールフォトの現場って、いろんな技術が必要になるんですね。

ほんとですよね!! でも撮影のバリエーションで言えば、いろんな撮影を経験することができるので、勉強になる分野だと思います。

広い意味でスクールフォトという分野ですけど、記念撮影もあれば、日常のリアルを撮ることもできる。式典もあれば、舞台もある。部活があると、文化系の写真も撮れるし、スポーツの写真も撮れるんです。僕はフォトグラファーとして10年になりますが、いろんなバリエーションの撮影ができるようになったと思います。

これからは、スクールフォトでは撮れないような、成人式や家族写真など、もっともっと撮影の幅を広げていきたいなと思っています。

いつかカメラで恩返しを… 一枚の写真に込める僕の想い

Qリンクエイジには「全ての愛を力に変える」というミッションがありますが、光武さんの考える「愛」とは何でしょうか。

相手のために最善を尽くそうと行動することだと思います。相手のことで自分の心が満たされ、それを”自分の喜び”としてとらえることができればいいなと思います。

僕にとって写真を撮るのも同じことです。例えば、園の行事でよくあるのが、保護者がお子さんの写真を撮ろうとしているところに僕が居合わせて「お子さんと一緒に写真撮りますよ」と声を掛けることがあります。僕がいなければお子さんだけの写真だったけれど、僕が撮影することで親子の写真を撮ることができるんです。保護者からも「親子の写真が撮れました!ありがとうございます!!」と喜んでいただけると、その瞬間、僕の心も満たされていきます。

その時はなんてことのない瞬間かもしれないけれど、いつか「あの時撮ってもらってよかった!」と思ってもらえる日が来るのであれば、その日を信じて、一枚一枚の撮影にベストを尽くそうと思います。

Qこれから挑戦したいことを教えてください。

さまざまな現場を経験してジャンルの幅を広げていきたいと思っていますが、僕がこれからやってみたいことは、これまでお世話になった人たちに「写真で恩返し」することです。

今日の自分がこうしていられるのは、これまでお世話になった人たちのおかげです。野球でお世話になったチームや監督、友人たち、これまでの僕を知ってくれている人たちに感謝しています。彼らの節目や記念となるようなタイミングに、僕が写真を撮りたいなと思っています。そういう機会があれば、もっといい写真を撮るんだ! というモチベーションにもなります。

これからも、フォトグラファーとして頑張っていきたいです!!

青春を野球に捧げてきたという光武さんにとって、仲間と過ごした思い出は生涯の宝物。

かけがえのない瞬間、その記憶と思い出が何よりも大事だと知っている彼だからこそ、今この瞬間を残すことに全力投球できるのだろう。

好きなものに向き合う彼の瞳は、誰よりも純粋に輝いている。

Interviewee by Tomoki Mitsutake

Interview, Text by Miya Ando
miya_ando

Photo by Haruna Morimoto

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